臨床心理医(ルイジアナ州)や臨床心理ドクター(カリフォルニア州)の免許更新のために、年間35時間前後のワークショップ(臨床心理医免許は心理ワークショップと医学ワークショップの両方)を受ける必要があります。今回は、アメリカ心理学会の「注意欠如・多動障害(ADHD)の最新のアセスメントと治療」の上級ワークショップに参加しました。私が普段の臨調経験やサイコロジスト養成や教員養成の大学院教育と訓練を行いながら痛感している通りの内容でした。ADHDの権威であるエール大学のDr. Thomas E. Brownの研究と実践に基づいた講義で素晴らしく包括的です。
日本の精神科医、小児科医、臨床心理士、スクールカウンセラー、教員、親御さんたちの全てに理解してもらいたいのは、特に「ADHDとは何か、どのようなアセスメントがされるべきで、どのような治療が有効で、何が期待できるか」ということです。また、教員を含めた専門家には、それに加えて「どのアセスメントをどのように選んで行い、結果をどう解釈して診断に役立てるか。」「どのような治療計画や教育計画をたて、どのような治療方法や療育方法を用い、その効果をどのように測定して、そのデータを計画の改善に役立てるか。」「それを本人や家族にどう説明して、どのような理解を促進するか。」ということです。
ひいては、ADHDのみならず、他の(日本で)「発達障害」と言われている「なんだか良く分からない障害」に社会が正確な理解をもてるようになるのが理想です。ちなみにADHDは欧米では「発達の段階で顕著になる障害」であり、最新の研究では「脳の前頭葉が司る整理、計画、問題解決、分析、統合などの高次思考機能(エグゼクティブ機能)が順調に発達していないことによる障害」であるのですが、自閉症のように「発達そのもの」に広汎的に障害がある真の意味での「発達障害」の中には含まれません。
日本で「発達障害者支援法」ができて、それ以前はヘルプがほとんど受けられなかったADHDや学習障害の人たちが発達障害の人たちと共に、援助を受けられるようになったのは素晴らしいことですが、これらを全部まとめて「発達障害」と呼んだために、医療現場でも教育現場でも大きな混乱が起こり、教員やソーシャルワーカーはもちろん、専門医や臨床心理士でさえこれらの違いや診断法や適切な治療法が良く分かっていない人がまだたくさんいます。
以前私も日本で研修会を行ったことがありますし、一般読者向けのコラム記事なども書いていますが、専門家の方は以下のDr.Brownのホームページ(英語)にとてもよい最新の情報がありますので、参考にして根本的なことをしっかりと学ばれるとよいと思います。(と思うと、やはりどの分野でも使える英語の教育がどれだけ重要かと言うことに思いがいきます。)
http://www.drthomasebrown.com/