「平和のためのコンサルティングとコーチング」のフォーラムがキャンパスで3日間あり、INSEADのグローバル・リーダーシップ・センター(IGLC)の創設者でリーダーシップ教育と組織変革の権威である、マンフレッド・ケッツ・ド・ブリーズ教授が、贈呈した本のお礼を言いに来て下さり、本の推薦文を書いて下さるそうです。精神分析的なエグゼクティブ・コーチングとリーダーシップ・デベロップメントの世界の第一人者で著書が数十冊あり、 「エグゼクティブ・コーチング 燃え尽きないために 上・下巻」「会社の中の権力者、道化師、詐欺師-リーダーシップの精神分析」「会社の中の困った人たち-上司と部下の精神分析」など日本語になっている本も数冊あります。
バージニア大学のバミック・バルカン名誉教授がメインの講演者です。著名な国際平和学者で精神分析医のバルカン名誉教授から「大グループとの自我同一性」、「選ばれたトラウマ」、「我ら 対 あいつら」のメンタリティー、「リーダーの精神力動」など、平和活動と人間性理解にとても有意義な話を聴いています。参加者の多くは、コンサルティング学のエグゼクティブ修士課程の卒業生で、たくさんの国から来たビジネスコンサルタントとエグゼクティブです。小グループディスカッションでは、オランダ人、白人の南アフリカ共和国人、ドイツ人、インド系マレーシア人と私の5人で「大グループとの自我同一性」と内面化された葛藤の自己体験についてオープンにシェアーしました。白人の南アフリカ共和国人女性エグゼクティブが、人種差別が国家政策だった時代に、自分は黒人差別をしていなかったのに、南アフリカ共和国の白人であるというだけで、国外で他の白人につばを吐きかけられたという話が印象的でした。ドイツ人女性ドクターは「冷たい戦争」の時代に、小学校の修学旅行で東西ベルリンの国境の側をバスが通る間は、ずっと普通に笑ったりしゃべったりを禁じられた経験や、検問所「チェック・ポイント・チャーリー」を訪れた印象 、又、広島の平和祈念資料館に子供を連れて行った時のインパクトについて話してくれ、マレーシア人社長は、マレーシア国内の東部西部の格差について教えてくれました。
クラスのディスカッションでも、素晴らしい講演に加えて、参加者が深く洗練された洞察をシェアーするので、毎回とても濃く広い学習体験です。
ドイツ人男性のコンサルタントは、第二次世界対戦中のホロコーストの後、ドイツではドイツ人であることの誇りを示すような行動が暗黙のうちにも政策的にも抑圧されており、1990年にワールドカップで優勝するまで、長い間ドイツの国旗を掲げることさえできなかったと話しました。ホロコーストは、ユダヤ人に計り知れないトラウマとなったが、違う意味でドイツ人のトラウマともなったということです。そういえば15年ほど前、20代のドイツ人の友人がサンディエゴの本屋で、ヒットラーの「Mein Kampf」の英語版が売られていることに驚き、「ドイツでは販売も閲覧も禁止されているので、本を実際に見て衝撃を感じた。」と言いました。日本語では、「我が闘争」と訳されていますが、英語では「MyStruggles (私の苦悩)」です。
今夕は、コンサルティング学エグゼクティブ修士課程の13回生の卒業式です。シンガポール校でも始まったこの修士課程のネットワークは世界中に広がっています。
明日の午後は、私が著書をベースに「Rising from the Ashes: Chosen Traumaand Forgiveness – An Analysis from Psychodynamic and Family system’s Perspectives of a Hiroshima Survivor’s Story」(不死鳥のごとく~『選ばれたトラウマ』と許しのこころ – 精神力動学と家族システム学的見地からみたヒロシマ被爆者のストーリーの分析)という講演をします。大勢の人が「楽しみにしている」と寄って来てくれました。国際紛争の歴史と被爆者の経験から何を学んで、今後の組織内の紛争や葛藤の解決につなげるか、ということについての講演です。私が本を英語で書くきっかけを作ってくれた同級生と似たような人たちのグループなので、私もとても楽しみです。キーノートのバルカン教授も本を読むのが楽しみだとおっしゃってくださいました。