中学校と高校では歴史とヒューマニティーの教育の一環として「8時15分」の内容を授業に取り入れていきたいとのことでした。
講演を聴いてくださったゲイブリエリーノ高校のハインリック校長は、 「 『8時15分』を昨日までに一気に読み大変感動しました。私は社会科の教員だったので、今歴史の授業を受け持っていたら、この副読本を授業にどれだけ有効に取り入れることができるか考えただけで、授業現場にもどりたくてしょうがない程です。」 とおっしゃってくださいました。
また、学区内の教員への 「歴史から学ぶこと。許す心の人間性」 についてのディスカッションでは、高年の男性教員から、 「被害者も許す心を持つことにより、前向きになれるということが実例を知って理解できたが、自分はどのように被爆者の許しを請えばよいのか教えて欲しい」 という質問も出ました。
ゲイブリエリーノ高校の教頭先生もジェファーソン高校の教頭先生も、 「これだけ大勢の生徒達が、ごそごそもせず、食い入るように講演を聴いているのを見ていてとてもうれしかった。何百人もの生徒が一斉にこのように振舞うのはなかなかありません。貴重なお話を聴かせていただいて、生徒達にも教員にもとてもよい学習の機会となった。」 とおっしゃってくださいました。
講演の途中、美甘進示の被爆体験の苦悩の場面では、ほとんどの生徒達が共感を表情や思わず漏れる声で示し、時計の盗難発覚後の進示の言葉、 「失うものがあれば、得るものがある」 を聴いて、高校生は会場のシアターに響き渡る感嘆の声をあげ、中学校では大喝采・大声援で会場の体育館がエコーで揺れるのではないかというぐらいでした。
ほとんどが中上流白人高齢者のシニアーセンターでは、80代のご婦人の一人が、 「私は第二次世界大戦を経験して、日本軍がどれだけむごかったかを紛れない事実として知っている。アメリカが日本のせいで二個目の原爆まで落とさなければいけない羽目になった。アメリカは原爆で日本を救ってやったのに。それを分かって私達アメリカ人戦争体験者に原爆の話をしているのか?」 と嫌悪の感情をむき出しにされた場面がありましたが、他の同年代のシニアーの方たち全員が、 「いいえ、今こそこの話を聴かなければいけないのよ。あなたのお父様の姿勢は本当に素晴らしい。それを私達に話してくれ、平和へのメッセージを世界に広めようとしている貴方の活動はとても有意義なことで、世界の平和のためには必要なこと。良く私達に話をしに来てくれた。ありがとう。」 と異口同音に言ってくださって 「8時15分」 の英語版を購入してくださいました。中には、ユダヤ系アメリカ人のシニアーで 「この本を既に購入して読みかけていたけど、被爆体験の描写が自分の戦争体験を思い出させて、辛くて読み進めなかった。でも、貴方の話を聴いて、この本のメッセージはとてもポジティブだということがわかったので、今から読み直します。」 と言ってくださるご婦人もいらっしゃいました。
アメリカの教育現場や地域社会で被爆体験についての講演者を招くというのは、めったにないことだそうで、多くの人たちに語りかけ、ヒロシマからの声を直接知っていただく貴重な機会になりました。
今回の試みは2014年6月末の貿易研修センター主催の海外教育者招聘事業の一環として、ロサンジェルスのサン・ゲイブリエル統一学校区から他23名の欧米の教育者と共に、広島訪問をされた際に美甘進示・章子父娘の講演に強く感銘してくださり、 「今まで、原爆が戦争を終わらせてくれたお陰で太平洋で戦っていた米軍人の父が生きて帰ってくることができたとしか思っていなかったが、実際に被爆者の話を聴いて、こんなに非人間的な苦しみを被爆者の人たちは経験したのかと知り、自分の国がこのようなことをしたということに対して申し訳なくてお詫びのことばもない。」 とおっしゃり、 「8時15分 ヒロシマで生きぬいて許す心」 の英語版を80冊以上購入して教育者に配ってくださった、ウィルソン小学校ジャニーン・マックギガン校長のお取り計らいにより、学校区教育委員長の正式なご招待で、可能になりました。マックギガン校長先生に心から感謝します。